このページは「日経マネー」の取材を受け、2003年6月号に掲載されました。

敷金に関するトラブル
このページをご覧の方は今、賃貸住宅にお住まいになっている方が大半であると思います。「いずれは一戸建てに・・・・・」あるいは「もっと広い部屋に・・・・・」とお考えの方ばかりではないでしょうか。
バブルの頃まで都会の(特に首都圏の)賃貸住宅市場は売り手(貸主・家主)市場でした。これは住宅難のため起こった事であり、必然的に借りる側は部屋に入るためには貸主の言う無理難題を聞かされる羽目になってしまいました。
礼金や権利金を徴収され、家賃の未払いを担保するために敷金を取られ、さらに保証人をたてさせ印鑑証明や収入証明を提出させられたり、あるいは「子供ができたら部屋を明け渡す」などという特約まで条件をつける。拒絶すれば部屋を貸してやらないなどという家主が大勢出てまいりました。
バブルの時期に入居した方は家賃が高いまま。したがって新しいところに移ったほうが安くなるため更新時期に住み替えられる方が多くなりました。

がここで今、多くのトラブルが発生しています。
このページではトラブルの実例とその判例(裁判の判決)及び対処法について公開します。

敷金の返還を巡るトラブル

最近不当に敷金を返還しない家主が増えています。
自分の財産である建物を新品同様にしておきたいという気持ちも解かりますが、レンタカーにたとえるとガソリン代以外に洗車費用・オイル代・タイヤ代・車内クリーニング代を請求されているみたいなもので、納得がいきません。
退去する側から見ればこの不況の折、少しでも返却される事が望ましいわけで、トラブルに発展していく事が多いようです。
原因の多くは家主(あるいは家主の不動産屋)側の無知・無理解にあるようです。
敷金とは法律的には家賃や契約不履行・借り主しの過失等による損害などの
原状回復を担保するために預かるものです。

原状回復 とは民法上、賃借人(借り手)を保護する規定で、賃貸人(家主)を保護するものではないのですが、この原状回復という言葉がそもそも誤解を生む要因になっています。
賃貸契約における原状回復とは損害賠償時の原状回復とは違い、決して「元の状態に戻す」という事ではありません。

使用していなくても年月とともに損耗していく(これを 自然損耗または経年劣化といいます)わけですから部屋を借りて何年か後に借りたときと同じに姿に戻すなどという事は、常識から見ても考えられない事です。(新築で入居して5年後に同じ状態にする事が可能かどうかすぐに解かるはずなのですが・・・・・・)
家主はその建物を貸して収益をあげているわけですから、修理して正常に利用させる義務があります。
つまり通常の使用をしていたのならば畳や壁紙の取り替えは家主の負担であり、借り手の負担であるわけがなく、敷金は100%返還されるべきものです。
では通常の使用とはどの程度なのでしょうか。具体的な例を見てみましょう。
壁、畳、ふすま、カーペットは日焼けによる色褪せ、及びたんすや冷蔵庫のあとに関しては生活する上で当然の利用の範囲であり、借主には修繕の義務はありません。
しかし、たばこによるカーペットや畳のこげあとや、ふすまに空けた穴などは借主に修繕義務があります。
ハウスクリーニングについてもたばこのヤニやカビなどは借主負担・それ以外の汚れは貸主負担です。
飲み物をこぼしたシミは故意とは認められないので貸主負担とした判例や、他の部屋に発生していないカビがこの部屋だけに発生している場合は借主が掃除を怠っていたとしてクリーニング代を借主負担とした判例があります。


ガイドラインはこちら
具体例はこちら



敷金を最大限に取り戻すためには

平成10年1月から「小額訴訟制度」が実施されており、裁判が簡単に起こせ、判決も1日でるようになりました。裁判所には用紙も用意されており、自分で出向き、記入すれば費用も印紙代も最大3000円で済み、大変便利になりました。
この制度の利用者の中で敷金の返還訴訟は全体の20%以上を締め、もっとも多くなっています。


小額訴訟制度を利用する際の注意

小額訴訟制度は書いて字のごとく小額でなければいけません。具体的には30万円以下です。従って敷金が30万円以上の場合は請求額を30万円以下にすれば利用できます。
最近では礼金を1ヶ月、敷金を3ヶ月にして敷金を30万円以上にし、小額訴訟制度を利用し難くする家主が増えていますので注意しましょう。
次にこれから入居する人は注意ですが、賃貸借は民法上契約行為に当たります。
契約は当事者の双方が合意の上で成立します。
従って借主が返還訴訟を前提にして契約をしようとしても、家主から契約を断られる事は間違いありません。
ですから契約が終わるまで話をしないほうがよいでしょう。そしてできれば退去のときまでいわないほうがよいでしょう。さもないと嫌がらせをされる恐れがありますから。

では次のページで過去の判例(裁判の判決)を見てみましょう      
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